東京高等裁判所 昭和24年(ム)3号 判決
再審原告
畠中與八
同
中村吉之助
再審被告
福岡通商産業局長
主文
本件再審の訴を却下する。
再審の訴の訴訟費用は再審原告の負担とする。
事実
再審原告訴訟代理人は行政裁判所が昭和十九年七月二十日同十四年第一五〇号試掘出願不許可処分取消請求事件について言渡した判決を取消し再審被告は再審原告に対し再審原告がした昭和十四年二月二十二日福岡県糟屋郡志免村大字吉原地内面積七万三千三百坪を鉱区とする石炭試掘出願を許可せよ訴訟費用は再審被告の負担とするとの判決を求めると申立てその理由として再審原告は昭和十四年二月二十二日福岡鉱山監督局長に対し福岡県糟屋郡志免村大字吉原地内面積七万三千三百坪を鉱区とする石炭試掘出願をしたところ同局長は同年十月十二日付を以て不許可処分をしたので再審原告はこれを不服として行政裁判所に出訴したところ行政裁判所は昭和十四年第一五〇号試掘出願不許可処分取消請求事件として審理の結果昭和十九年七月二十日再審原告敗訴の判決言渡をした再審原告中村吉之助は昭和二十四年四月中旬右訴訟記録を閲覧したるところ右訴訟結審直前昭和十九年六月十七日付で行政裁判所に対し結審を促す旨の同原告名義の上申書が提出せられていることを始めて知つたのであるが右上申書は同原告不知の間何者かが同原告の名を騙りその出願権を葬るため早々に結審を促すことを策謀したものであつて行政裁判所は右上申書の提出により必要な第二囘の実地検証を行わず審理不尽のまま結審して判決を下したものであるそこで再審原告は右偽造文書によつて判決に影響を及ぼす攻撃若くは防響の方法の提出を妨げられたのであるから民事訴訟法第四百二十條第一項第五号後段により又右上申書の偽造行使についてはまだ有罪の確定判決はないが証拠欠缺外の理由により有罪の確定判決を得ることができないのであるから同條第二項後段により本件再審の訴を提起する次第であると陳述した。
再審被告訴訟代理人は訴却下の判決を求め答弁として本件再審の訴は裁判所法施行令第四條第五項により不適法であると陳述した。
理由
再審原告が再審被告を相手方とし行政訴訟法を提起し右訴は行政裁判所昭和十四年第一五〇号試掘出願不許可処分取消請求事件として同裁判所が審理の結果昭和十九年七月二十日再審原告敗訴の判決を言渡したことは同事件記録に徴し明らかである裁判所法施行令第四條第五項には「裁判所法施行前行政裁判所において完結した行政訴訟事件に関する事項は東京高等裁判所がこれを処理するものとし、その手続についてはなお從前の例による」と規定しているから本件再審の訴の処理については從前の手続規定である行政裁判所法を適用すべきものである然るところ同法第十九條には「行政裁判所ノ裁判ニ対シテハ再審ヲ求ムルコトヲ得ス」とあるから本件再審原告の訴は不適法であるよつてこれを却下すべきものとし、主文のとおり判決をする。